「このルーター、まだサポートされていますか」「業務システムのサーバー、いつまで使えるんでしょう」。取引先のセキュリティチェックシートや、社長からのひと言で、社内の機器やソフトのサポート期限を急に調べることになる担当者は少なくありません。調べ始めると、パソコンのOSはすぐ分かっても、ルーターやNAS、開発会社が作った業務システムの土台になっているソフトの期限は、どこを見ればよいか分からないことが多いはずです。
この記事は、EOLという言葉の意味を確かめたうえで、社内のどこに期限が潜んでいるかを洗い出し、切れる前に対応を決めたい担当者に向けて書いています。先に、要点をまとめます(Microsoft、Cisco、PHPの公式ページとIPAの公開資料で2026年11月3日に確認)。
- EOL(End of Life)は、メーカーや開発元が修正プログラムやサポートの提供を終える時期のことです。期限を過ぎても機器やソフトは動き続けますが、新しく見つかった脆弱性は直らないまま使うことになります
- 期限はパソコンのOSだけにあるわけではありません。Office・業務ソフト、ルーターやUTMなどのネットワーク機器、NAS・複合機、自社開発システムの土台(サーバーOS・データベース・プログラミング言語)にも、それぞれ別の期限があります
- 対策は「期限の一覧(EOL台帳)を作り、外部につながる機器と業務が止まるものから順に決める」ことです。期限は数か月から数年前に公表されるので、予算の時期に間に合わせることができます
以下で用語の違いを整理し、EOL台帳の列の作り方と、期限が近いものの対応順を判断できるようにします。
EOLとは何か? EOSや延長サポートとはどう違うのか?
EOLは、製品の提供元が修正プログラムや問い合わせ対応をやめる時期を指します。似た言葉にEOS(販売終了やサポート終了)や延長サポートがあり、メーカーによって段階の名前と中身が違うため、期限を調べるときは「セキュリティ更新がいつまで出るか」で読みます。
EOL(サポート終了)はEnd of Lifeの略で、日本語では「サポート終了」「サポート切れ」と呼ばれることが多い言葉です。メーカーの多くは、販売の終了からサポートの終了までを何段階かに分けて公表しています。
| 段階の呼び方(例) | 意味 | 担当者にとっての影響 |
|---|---|---|
| 販売終了(End of Sale) | 新しく買えなくなる | 同じ機種で台数を増やせない。故障時の買い替えは後継機になる |
| メインストリームサポート終了 | 機能の追加や不具合の修正が止まる | セキュリティ更新は続く製品が多い |
| 延長サポート期間 | セキュリティ更新など、限られた内容だけが続く | 使い続けられるが、新機能や一般の不具合修正は期待できない |
| サポート終了(EOL・最終サポート日) | セキュリティ更新と問い合わせ対応が終わる | 新しい脆弱性が見つかっても直らない |
たとえばMicrosoftの「固定ライフサイクル ポリシー」では、発売時にサポートの期間が決まり、最低5年のメインストリームサポートの後に、製品によっては延長サポートが続きます。延長サポート中は、セキュリティ更新プログラムが追加費用なしで提供されます。サポート終了後のセキュリティ更新は、一部の製品で有償の拡張セキュリティ更新プログラム(ESU)を契約した場合に限られます。
一方、Windows 11やMicrosoft 365のように継続して更新される製品は「モダン ライフサイクル ポリシー」に従い、利用者が提供元の示す要件どおり最新の状態に保つことが、サポートを受け続ける条件になっています。Windows 11そのものは使えても、バージョンごとに終了日があり、Home・Proの24H2は2026年10月に終了日を迎えています。「Windows 11だから大丈夫」とは言い切れず、バージョンまで確かめる必要があります。
ネットワーク機器では、Ciscoのように販売終了日の通常6か月前に告知し、販売終了から段階的に修正の提供を終え、最終サポート日(Last Date of Support)で契約に基づくサポートも終わる、という形で公表するメーカーがあります。呼び方は各社で違うので、自社の機器のメーカーがどの段階で何を止めるのかを、公式の告知ページで読み分けます。
「保守切れ」とは何が違うのか?
「保守切れ」は、多くの場合、販売店や開発会社との保守契約の期限が切れた状態を指します。メーカーの製品サポート(EOL)とは別の期限なので、台帳でも別の列で管理します。
保守契約が切れていても、製品自体がまだメーカーのサポート期間中なら、セキュリティ更新は受け取れます。逆に、保守契約を更新し続けていても、製品のEOLを過ぎていれば、保守会社も修正プログラムを用意できません。両方の期限を並べて見ておくと、「保守契約を更新すべきか、置き換えを考えるべきか」の判断材料になります。保守契約が切れているときの確認の進め方は、保守契約が切れたまま動いているシステムのリスクと再契約の判断で扱っています。
サポートが切れると、何が起きるのか?
機器やソフトは動き続けるので、期限当日に業務が止まることは通常ありません。困るのは、その後に見つかる脆弱性が直らないこと、取引先の確認で説明が必要になること、ほかのソフトの対応外になることの3つです。
IPA(情報処理推進機構)は、情報セキュリティ対策のキホンの1つ目に脆弱性対策を挙げ、「古いままにしておくと、セキュリティに弱点(脆弱性:ぜいじゃくせい)がある状態になってしまい、とても危険です」と説明しています。サポートが終わった製品は、この「最新のバージョンにする」ができなくなった状態です。
サポート終了後に起きることを、もう少し具体的に分けると次のとおりです。
- 新しい脆弱性が修正されない: 期限後に見つかった弱点は、提供元が修正プログラムを出しません。特に、インターネットから直接届く機器(VPN装置、ルーター、UTM、公開しているWebサーバー)では、外から狙われる入口がそのまま残ります
- 取引先への説明が必要になる: 取引先から届くセキュリティチェックシートでは、サポート期限内のOSを使っているかを尋ねる設問が含まれることがあります。回答の仕方は取引先から届くセキュリティチェックシートの回答実務で整理しています
- ほかのソフトや周辺機器が対応しなくなる: ブラウザ、ウイルス対策ソフト、プリンターのドライバーなどが、古いOSを動作対象から外していきます。OSは動いていても、使いたいソフトが入らない状態になります
- 故障しても同じ部品が手に入らない: ハードウェアは販売終了後、修理部品の在庫がなくなると修理を受けられなくなります
期限が過ぎた日から急に危険になるというより、時間がたつほど直っていない弱点が積み重なっていく、と考えると対応の順番を決めやすくなります。
社内のどこに、サポート期限があるのか?
パソコンのOSとOfficeは目に付きやすい一方で、ネットワーク機器・NAS・複合機と、自社開発システムの土台になっているソフトは見落とされがちです。6つの層に分けて洗い出すと、漏れを減らせます。
| 層 | 例 | 期限の調べ先 | 見落としやすい点 |
|---|---|---|---|
| パソコンのOS | Windows 11 Pro、macOS | メーカーのライフサイクルページ | Windows 11でもバージョンごとに終了日がある |
| Office・業務ソフト | 買い切り版Office、会計ソフト、CAD | メーカーのサポート情報 | 買い切り版は年版ごとに終了日が決まっている |
| サーバーOS | Windows Server、Linuxの各ディストリビューション | メーカーのライフサイクルページ | 社内のどの業務がそのサーバーで動いているか |
| ネットワーク機器 | ルーター、UTM、VPN装置、Wi-Fiのアクセスポイント | メーカーの販売終了・サポート終了の告知 | ファームウェアの更新が止まる日。設置したままで誰も見ていない |
| NAS・複合機 | ファイル共有用のNAS、ネットワーク複合機 | メーカーの告知、リース会社 | NASのOS(ファームウェア)にも期限がある |
| 自社開発システムの土台 | プログラミング言語(PHP等)、データベース、フレームワーク | 各ソフトの公式サイト | システムの画面からは見えない。開発会社に聞かないと分からない |
Windows Serverのように、それ自体で1本の記事になる大きな期限もあります。サーバーOSの移行計画はWindows Server のサポート終了(EOL)対応の進め方で、2026年10月13日に重なった期限はOffice 2021とServer 2012は2026年10月13日に終了で扱っています。この記事では、それらを含めた社内全体の期限をどう一覧にするかに絞ります。
自社開発システムの土台は、どうやって調べるのか?
開発会社に作ってもらった業務システムは、画面からは土台のソフトの種類やバージョンが分かりません。保守契約の窓口か納品資料で「動いているサーバーOS・データベース・言語とそのバージョン」を確認します。
たとえばPHPは、公式サイトで各バージョンに2年間の通常サポートと、その後2年間のセキュリティ修正だけの期間を設けると公表しています。2026年11月3日時点で、セキュリティ修正が続いているのは8.2〜8.5で、8.2の終了日は2026年12月31日です。8.1以前は修正の提供が終わっています。
業務システムの土台がこうした古いバージョンのまま動いていることは珍しくありません。ただ、土台だけを入れ替えると、システム側のプログラムが動かなくなることがあります。土台の更新は、パソコンのOS更新のように担当者が自分でボタンを押す作業ではなく、開発会社と一緒に影響を調べてから進める作業です。「動いているから触るな」と言われてきたシステムの進め方は、触れないシステムの安全な改修手順で整理しています。
サポート期限の一覧(EOL台帳)は、どう作るのか?
IT資産の台帳があればそこに「バージョン」「サポート終了日」「確認日」「調べたページ」の列を足し、なければ6つの層ごとに機器とソフトを書き出すところから始めます。終了日は、必ずメーカーの公式ページで確かめた日付と出典を残します。
新しい台帳を一から作るより、すでにある機器の一覧に列を足すほうが続けやすくなります。機器の一覧そのものがない場合は、IT資産管理とは何かと台帳づくりの手順で、まず現物を数えるところから始めてください。
EOL台帳に置く列は、次の表が目安です。
| 列 | 書く内容 | 書き方の例 |
|---|---|---|
| 層 | 6つの層のどれか | ネットワーク機器 |
| 対象 | 製品名と用途 | 本社のUTM(インターネットの出入口) |
| バージョン | OSやファームウェアの版 | ファームウェア 7.x |
| 台数・設置場所 | どこに何台 | 本社サーバー室 1台 |
| サポート終了日 | 公式ページに書かれた日付 | 2027年3月31日 |
| 調べたページ | 終了日を確認したURL | メーカーの告知ページ |
| 確認日 | 担当者が確認した日 | 2026年11月3日 |
| 外部とつながるか | インターネットから直接届くか | はい |
| 止まると困る業務 | 影響する業務 | 全社のインターネット接続、VPN |
| 対応方針と期限 | 更新・置き換え・延長・廃止 | 2027年1月までに後継機へ置き換え |
書き方の例は、列の使い方を示すための記入例です。製品名や日付は自社の機器の公式情報に置き換えてください。
調べるときのコツは3つです。
- バージョンは現物で確かめる: Windowsは「winver」と入力して表示されるバージョン、ネットワーク機器やNASは管理画面のファームウェア表示で確かめます。購入時の記録と、今動いている版が違うことがあります
- 終了日はメーカーのページで確かめる: MicrosoftはWeb上で製品ごとのライフサイクルを検索できます。ほかのメーカーも「製品名 サポート終了」で公式の告知ページを探し、まとめサイトの日付だけで台帳を埋めないようにします
- 分からない欄は「不明」と書いて残す: 自社開発システムの土台のように、すぐに分からないものもあります。空欄にせず「不明・開発会社に確認中」と書いておくと、確認漏れを防げます
台帳は、少なくとも四半期に1回、終了日が近い行と「不明」の行を見直します。メーカーは期限を延ばすこともあるので(Windows 10の個人向け延長が後から変わった例があります)、確認日の列が古い行から確かめ直します。
期限が近いものは、どの順で手を付けるか?
残り期間の短さだけで決めず、「インターネットから直接届くか」と「止まると業務が止まるか」の2つを先に見ます。外部につながり、残り1年を切っているものが最優先です。
台帳の行を、次の順で並べ替えると、手を付ける順番が見えてきます。
- インターネットから直接届くもの(VPN装置、UTM、ルーター、公開サーバー)で、残り1年を切っているもの
- 社内だけで使うが、止まると業務が止まるもの(基幹システムのサーバー、ファイル共有のNAS)
- 台数が多いもの(社員のパソコンのOS、Office)。入れ替えに時間と予算がかかるので、早めに計画に入れる
- それ以外(会議室の機器、使用頻度の低いソフト)
並べ替えた行ごとに、対応方針を次の5つから選びます。
| 方針 | 向いている場面 | 注意点 |
|---|---|---|
| 更新する | 同じ製品の新しいバージョンに上げられる | 業務ソフトや周辺機器が新しい版で動くか、先に試す |
| 有償延長で時間を稼ぐ | 置き換えの準備が期限に間に合わない | ESUなどの延長は一部の製品だけ。期間が限られ、費用がかかる |
| 置き換える | 後継製品や別のサービスに移る | 移行作業と並行運用の期間を見込む |
| ネットワークから切り離す | 古いソフトでしか動かない機器を残すしかない | インターネットや社内ネットワークから外し、使い方を限定する |
| 廃止する | 使っていない、ほかで代わりがきく | データの移し替えと、機器のデータ消去を忘れない |
自社開発システムで、土台の更新に大きな改修が必要と分かった場合は、延命と作り直しのどちらにするかの判断になります。比べ方は老朽化した社内システムの「延命 vs 作り直し」判断基準で解説しています。
予算と稟議は、いつ準備すればよいか?
サポート終了日は前もって公表されるので、期限の2年前から予算の計画に載せられます。台帳の終了日を見て、翌年度の予算を組む前に、置き換え候補と概算を集めておきます。
EOLの対応で困るのは、期限の直前に気づき、予算の締め切りが過ぎていることです。会社の予算が年1回決まるなら、次のように逆算できます。
- 期限の2年前: 台帳に載せ、置き換えの候補を調べ始める
- 期限の1年前: 見積もりを取り、翌年度の予算に入れる
- 期限の半年前: 移行の作業を始める。並行運用の期間を確保する
稟議では、「サポートが切れたら何が起きるか」を、脆弱性・取引先への説明・修理の可否の3点で書くと、ITに詳しくない決裁者にも伝わりやすくなります。稟議書の組み立て方はIT導入の稟議書の書き方を参考にしてください。
まとめ:外部につながる機器の期限から調べる
EOLへの備えで押さえたいのは、次の3点です。
- EOLは提供元が修正やサポートをやめる時期で、期限後も動くが新しい脆弱性は直らない。保守契約の期限とは別に管理する
- 期限はOSだけでなく、ネットワーク機器・NAS・自社開発システムの土台にもある。6つの層で洗い出す
- 台帳には終了日と出典・確認日を残し、外部につながるものと業務が止まるものから対応を決める
手を付けるなら、インターネットの出入口にあるルーター・UTM・VPN装置の型番とファームウェアのバージョンを確かめ、メーカーのサポート終了日を台帳の1行目に書くところからです。その1行が、ほかの機器を同じ形で書き足していくときの見本になります。




