「営業部はChatGPTで提案書の下書きを作っている。経理部はGeminiに請求書の文面を考えさせている。製造部の若手はCopilotで作業手順のメモを整理している」——総務担当者がこの状況を把握したのは、たまたま雑談で3つの部署の話が同時に耳に入ったからでした。10人未満の会社であれば「社員数人に聞けば全体が分かる」で済みますが、30人規模になると部署が明確に分かれ、部署ごとに異なるツール・異なる使い方・異なる情報の扱い方で、生成AIの利用がバラバラに定着してしまっているケースが目立ちます。
この記事は、シャドーITが単一のパターンではなく、部署ごとに異なる形で複数同時多発的に広がってしまった30人規模の会社に向けて、その実態をどう横断的に把握し、どう1つの統一ルールへ束ねていくかを具体的に解説します。「発覚後にまず何をすべきか」という初動対応の時系列は姉妹コラムで扱っていますので、本記事では部署間のばらつきをどう解消するかという、30人規模特有の論点に絞って掘り下げます。
この記事で分かること
- なぜ30人規模の会社では、部署ごとにバラバラな形で生成AI利用が広がりやすいのか
- 部署横断で実態を把握するための調査設計(部署代表へのヒアリングシート例)
- 部署ごとの利用実態を1つのマトリクスに集約する方法
- 部署間で温度差がある状態から、共通ルールへ合意形成する進め方
- 統一後も部署ごとの特性を残す「共通部分+部署別補足」という設計思想
- 総務・経営者が兼任でこの調整を進めるための時間配分の目安
なぜ30人規模で「部署ごとにバラバラ」が起きるのか
10人未満の会社では、社員全員が同じフロアで働き、経営者が一人ひとりの業務内容を把握できる距離感があります。しかし30人規模になると、営業・経理・製造・総務といった部署が明確に分かれ、部署ごとに使う情報の性質も、業務のリズムも、ITリテラシーの水準も異なってきます。この「分かれ方」こそが、生成AI利用がバラバラに広がる最大の要因です。
営業部は顧客への提案書や見積もりのメール文面を早く仕上げたいという動機で、経理部は月末の請求書処理や経費精算の定型文を効率化したいという動機で、それぞれ独立して生成AIを試し始めます。部署間の横のつながりが10人未満の会社ほど密ではないため、「隣の部署も使っている」という情報共有すら起きにくく、結果として各部署が独自に、独自のツールで、独自のルール(というよりルール不在の状態)のまま利用を広げてしまいます。
さらに30人規模では、情シス担当はおろか、IT管理を専任で見る人がまだ配置されていない会社が大半です。総務担当者や経営者がIT管理を兼任し始める段階ではありますが、日々の本業に追われる中で、各部署の細かい利用実態にまで目が届く余裕はありません。気づいたときには、3つも4つも部署がそれぞれ異なるAIサービスを、異なる基準で使っている状態が出来上がっている——これが30人規模特有の「事後発覚」のパターンです。
部署が3つ以上に分かれている会社では、「全社で1つの状況」ではなく「部署の数だけ異なる利用状況」が同時に存在すると想定して調査を設計したほうが、実態を取りこぼしません。
どんな経路で「部署ごとのバラバラ」が発覚するか
複数部署にまたがるシャドーAI化は、多くの場合、一度に全体が判明するわけではなく、断片的な情報が積み重なって徐々に輪郭が見えてくるという発覚のしかたをします。よくある発覚の経路を知っておくと、自社が今どの段階にいるかを把握しやすくなります。
- 経費精算のタイミングで発覚するケース: ある部署が独自に有料プランを契約しており、月次の経費精算で総務担当者の目に触れて発覚する。この経路では、少なくとも1つの部署の利用実態は具体的に把握できるものの、他の部署に同様の契約がないかは別途確認が必要です。
- 雑談やミーティングの中で偶然発覚するケース: 部署をまたぐ会議や社内の雑談で、複数の部署がそれぞれ別のツールを使っている話が偶然重なって判明する。このパターンは氷山の一角しか見えていない可能性が高く、本記事で説明する横断調査を早急に行う必要があります。
- 新入社員や中途入社者の指摘で発覚するケース: 前職でAI利用ルールが整備されていた会社から転職してきた社員が、「この会社にはAIの利用ルールがないんですね」と指摘したことをきっかけに、総務担当者が初めて全社的な実態を調べ始める。
- 取引先や顧客からの問い合わせで発覚するケース: 「この提案書、AIで作成されたものですか」と取引先から尋ねられ、社内で確認したところ、営業部だけでなく他部署でも同様の使い方が広がっていたと分かる。対外的な信用に関わるため、他の経路より優先度の高い対応が必要になります。
どの経路であっても、発覚した時点で「たまたま見つかったこの部署だけの問題」と捉えず、「他の部署にも同様の状況がないか」を前提に調査範囲を広げる姿勢が、30人規模の会社では特に重要です。部署が分かれている分、1つの部署の実態が全体を代表しているとは限りません。
部署ごとの利用実態を横断的に把握する
10人未満の会社であれば、経営者が一人ひとりに直接聞くだけで実態を把握できます。しかし30人規模で部署が分かれている場合、この方法は現実的ではありません。総務担当者一人が全社員に個別ヒアリングをする時間は取れませんし、部署ごとの業務内容を総務担当者が正確に理解しているとも限らないためです。
そこで有効なのが、各部署の責任者(課長・マネージャークラス)を窓口にした横断調査です。進め方は次の3ステップです。
- 部署責任者への個別ヒアリング(各20〜30分): 「部署内で生成AIを使っている人はいるか」「どんなツールを、どんな業務に使っているか」「顧客名や金額など、社外に出せない情報を入力したことがあるか」の3点を聞く
- 部署内アンケートの補完(任意): 責任者が把握しきれていない個人利用を拾うため、匿名で回答できる簡単なアンケートを部署メンバー全員に配布する
- 総務担当者による集約: 部署ごとの回答を1つの表にまとめ、全社的な傾向を可視化する
このとき重要なのは、部署責任者へのヒアリングを「摘発」の場にしないことです。すでに複数部署で利用が広がっている状況は、多くの会社が通る自然な流れであり、部署責任者や担当者を責める場ではないという前提を、ヒアリングの冒頭で明確に伝えてください。免責を示さないまま調査を始めると、正直な回答が得られず、実態把握そのものが不完全になります。
ヒアリングシートの項目例
部署責任者へのヒアリングをスムーズに進めるため、事前に次のような項目を用意しておくと効率的です。
| 項目 | 確認内容 |
|---|---|
| 利用しているサービス | ChatGPT・Gemini・Copilot・Claude など、部署内で使われているサービス名 |
| 契約形態 | 個人の無料アカウントか、部署や個人が独自に契約した有料プランか |
| 主な用途 | メール文面作成、資料の要約、議事録整理、コード生成など |
| 入力している情報の性質 | 一般的な文章の相談のみか、顧客名・金額・社内資料を含むか |
| 利用頻度 | ほぼ毎日か、週に数回程度か |
| 部署内での認知度 | 部署内の何割程度が使っているか(体感で構わない) |
この表を部署の数だけ埋めていくと、どの部署がどの程度、どんなリスクを抱えているかが一覧で見えるようになります。
部署別マトリクスで全体像を可視化する
各部署のヒアリング結果が集まったら、次は横断的な比較ができるマトリクスに整理します。部署ごとに個別対応するのではなく、全社を俯瞰した上で優先順位をつけるためです。
マトリクスを作る際の軸は、次の3つに絞ると扱いやすくなります。
- 利用頻度(縦軸候補1): 日常的に使われているか、まだ試験的な利用に留まっているか
- 入力情報の機密度(縦軸候補2): 顧客情報や金額など、社外に出せない情報を含んでいるか
- 契約形態の適切さ(横軸): 学習オプトアウトが標準の法人プランか、個人の無料アカウントのままか
この3軸を掛け合わせると、「利用頻度が高く、機密情報を扱っていて、個人の無料アカウントのまま」という最もリスクの高い組み合わせが自然と浮かび上がります。多くの場合、経理部や営業部のように顧客と直接やり取りする部署が、この高リスクの象限に入りやすい傾向があります。
対応の優先順位は、このマトリクスで浮かび上がった高リスクの部署から着手するのが効率的です。全部署に同時に同じ対応を求めるのではなく、「まず経理部の入力ルールを固める」「次に営業部の契約形態を見直す」という順番で進めることで、限られた時間の中でもリスクの高い部分から確実に手当てできます。
部署間の「温度差」にどう向き合うか
部署ごとに利用実態がバラバラだと、AI活用への熱量にも大きな差が生まれます。営業部は「もう手放せないくらい便利」と積極的な一方、製造部は「うちには関係ない」と無関心、経理部は「勝手に使うのは怖い」と及び腰、というように、部署ごとの温度差が統一ルール作りの障害になることがあります。
この温度差を無視して、全社一律の厳格なルールを一方的に導入すると、次のような反応が起きがちです。
- 積極的な部署からは「せっかく効率化していたのに、余計な手間が増えた」という反発
- 消極的な部署からは「自分たちには関係ないルールを押し付けられた」という無関心の継続
- 及び腰だった部署からは「結局、何をどこまでやっていいのか分からないまま」という不満の継続
これを避けるためには、統一ルールを「制約」としてではなく「安心して使うための土台」として説明することが有効です。積極的な部署に対しては、「今の使い方を止めるのではなく、リスクの高い部分だけ調整する」という位置づけを明確にします。消極的な部署に対しては、「AI活用は義務ではないが、他部署の事例を参考にできる状態を作っておく」という説明で、無理に利用を強制しない姿勢を示します。
30人規模の会社でルール導入がこじれる最大の原因は、「一律に同じことを求める」姿勢そのものにあることが多く、部署ごとの温度差を前提とした伝え方の工夫が定着率を左右します。
共通ルール+部署別補足という設計
部署ごとに業務内容も情報の性質も異なる以上、1つの画一的なルールですべての部署をカバーしようとすると、どうしても抽象的で使いにくいルールになりがちです。そこでお勧めしたいのが、全社共通の最低限のルールと、部署ごとの補足を分けて設計する方法です。
全社共通のルールには、部署を問わず適用すべき最低限の項目だけを含めます。
- 顧客名・取引先名・金額など、社外に出せない情報は入力しない
- AIの出力をそのまま業務に使わず、必ず人が内容を確認する
- 会社として把握していないサービスを新たに使い始める場合は、事前に総務へ相談する
その上で、部署ごとの補足には、その部署特有の業務に即した具体例を追加します。
- 営業部の補足: 「見積金額や契約条件を含む文面は、社名を伏せた一般的な文章に置き換えてから入力する」
- 経理部の補足: 「請求書・領収書の画像やPDFをそのままアップロードせず、金額や取引先名を除いた形式の文面相談に留める」
- 製造部の補足: 「図面データや独自の製造工程に関する具体的な数値は入力しない。作業手順の一般的な整理のみに使う」
この「共通+補足」の構造にすることで、全社で守るべき最低限のラインを保ちながら、各部署が自分たちの業務に即した具体的な判断基準を持てるようになります。部署別の補足は、部署責任者に一次案を作ってもらい、総務担当者が横断的な整合性をチェックする形で進めると、現場の実態に即した内容になりやすく、合意形成もスムーズです。
合意形成の進め方: 部署責任者を巻き込む
統一ルールを総務担当者や経営者だけで作って一方的に通達すると、現場の実態と乖離した内容になりがちです。30人規模の会社では、部署責任者を策定プロセスに巻き込むことで、実効性のあるルールに近づけられます。
進め方の一例です。
- 部署横断の実態調査(1〜2週間): 前述のヒアリングとマトリクス作成を行う
- たたき台の作成(総務担当者、数日): 共通ルールの骨子と、部署別補足の枠組みを作る
- 部署責任者を集めた検討会(1回、1時間程度): たたき台を見せ、部署別補足の内容を各責任者に持ち帰って検討してもらう
- 部署別補足の提出(1週間程度): 各部署責任者が自部署の具体例を持ち寄る
- 統合と最終確認(総務担当者、数日): 全体の整合性を確認し、最終版をまとめる
- 全社周知(即日〜数日): 朝礼やチャットツールでの共有、部署ミーティングでの説明
この一連の流れは、急いでも2〜3週間程度かかるのが実情です。30人規模の会社が兼任体制でこの調整を進める場合、本業と並行して無理なく進められる分量に区切ることが重要です。特にステップ3の検討会は、全部署責任者を一度に集めるのが難しければ、部署ごとに個別の短いミーティングに分けても構いません。
部署責任者からよく出る反論とその対応
横断調査や統一ルールの策定を進める中で、部署責任者から次のような反論が出ることがあります。あらかじめ想定しておくと、その場で立ち止まらずに対応できます。
- 「うちの部署は特に問題になるような使い方はしていない」: 実態を過小に申告する意図がなくても、責任者自身が部署メンバー個々の使い方を正確に把握できていないことがあります。この場合は、責任者の認識だけに頼らず、前述の匿名アンケートを併用して個人レベルの利用実態を補完的に確認することをお勧めします。
- 「他部署も好きにやっているのに、なぜうちだけルールで縛られるのか」: 特定の部署を狙い撃ちしているわけではなく、全部署に同じ調査・同じルールを適用していることを明確に伝えます。前述の「共通ルール+部署別補足」という設計自体が、全部署平等というメッセージを裏付ける材料にもなります。
- 「ルールが増えると業務のスピードが落ちる」: 統一ルールの目的は利用を制限することではなく、事故を防ぎながら活用を続けられる状態を作ることだと繰り返し伝えます。実際に、共通ルールに含める項目を絞り込むこと自体が、業務スピードへの影響を最小化する工夫でもあります。
- 「うちの部署だけ特別扱いしてほしい(逆に、特別に緩くしてほしい)」: 部署別補足の枠組みがあることを説明し、業務特性に応じた調整は補足の中で可能である一方、全社共通の最低限のルールだけは例外を作らない方針であることを明確にします。
これらの反論に共通するのは、「なぜ自分たちがこの対応をしなければならないのか」という納得感の欠如です。横断調査の結果(マトリクス)を実際に見せながら説明すると、抽象的な説得よりも納得を得やすくなります。「うちの部署だけ」という感覚を、データに基づいた全社的な視点に置き換えることが、合意形成の鍵になります。
統一ルール導入後、効果をどう確認するか
統一ルールを作って周知した後、それで終わりにせず、実際に機能しているかどうかを一定期間後に確認する仕組みを組み込んでおくと、形骸化を防げます。30人規模の会社であれば、大掛かりな監査の仕組みは不要で、次のような軽量な確認で十分です。
| 確認方法 | 頻度の目安 | 確認する内容 |
|---|---|---|
| 部署別窓口担当者への簡単な聞き取り | 3ヶ月に1回程度 | ルールに沿った運用ができているか、新しい使い方が出てきていないか |
| 全社アンケートの再実施 | 半年に1回程度 | 導入時のマトリクスと比較し、リスクの高い象限が減っているか |
| ヒヤリハット・トラブルの共有 | 発生都度 | 入力ミスや情報漏えいの懸念が生じた場合、原因と再発防止策を部署間で共有する |
特に有効なのが、導入時に作成したマトリクスを、半年後に同じ形式で作り直して比較することです。「経理部の契約形態が個人の無料アカウントから法人プランに切り替わった」「製造部の利用頻度が上がったが、入力情報の機密度は低いままで維持されている」といった変化を可視化できれば、統一ルールがどの程度定着したかを客観的に把握できます。
部署ごとの利用実態は業種によっても変わる
ここまでは営業・経理・製造という一般的な部署構成を例に説明してきましたが、業種によって「どの部署が最もリスクの高い使い方をしやすいか」の傾向は変わります。自社の業種特性を踏まえて、横断調査の重点を調整すると効率的です。
- 士業・コンサル系のように顧問先の情報を扱う業種: 営業部門よりも、顧客対応の最前線にいる担当者個人の利用実態を重点的に確認する必要があります。部署という単位よりも、顧客接点を持つ個人単位での調査が有効な場合があります。
- 製造業・建設業のように図面や仕様を扱う業種: 製造部・設計部門での利用が、他業種と比べて見落とされがちです。「文章を扱う部署ではないから大丈夫」という思い込みで調査対象から外してしまわないよう注意してください。
- 小売・サービス業のように顧客と直接接する業種: 店舗や現場スタッフが個人のスマートフォンで顧客対応の下書きを作成しているケースがあり、本社の総務担当者からは実態が見えにくい部分です。現場責任者を通じた聞き取りが特に重要になります。
自社の業種特性に照らして、「見落としやすい部署はどこか」を意識しながら横断調査の範囲を設計することが、実効性のある実態把握につながります。
よくある失敗: 一部署だけ対応して終わらせてしまう
30人規模の会社で起きがちな失敗が、最初に発覚した部署(多くは経理部や営業部)だけに対応して満足してしまい、他の部署の実態を横展開して確認しないまま終わらせてしまうケースです。
「経理部の入力ルールは固めたが、実は製造部でも似たような使い方が広がっていた」
これは決して珍しい話ではありません。1つの部署で問題が見つかったら、それは氷山の一角である可能性を疑い、他の部署にも同様の実態がないか横展開で確認する習慣をつけることが、30人規模特有の「部署が分かれているからこそ見落としが起きる」というリスクへの対処法になります。
もう一つの失敗パターンは、統一ルールを作ったものの、部署ごとの補足を作らずに終わらせてしまうことです。共通ルールだけでは抽象的すぎて現場に浸透しにくく、結局「よく分からないから今まで通り」という状態に逆戻りしてしまいます。共通ルールと部署別補足はセットで運用してこそ機能する、という点を忘れないようにしてください。
統一後の運用: 部署ごとの窓口を明確にする
ルールが完成した後も、部署ごとに疑問や新しい使い方の相談が出てきます。総務担当者一人がすべての部署からの問い合わせを受け続けるのは、兼任体制では現実的ではありません。
そこで、各部署に1名、AI利用の相談窓口となる担当者(必ずしも管理職である必要はない)を置いておくことをお勧めします。部署内の窓口担当者が一次対応し、判断に迷う場合だけ総務担当者にエスカレーションする、という二段構えにすることで、総務担当者の負担を抑えながら各部署の実態に即した相談対応ができるようになります。
- 部署ごとの窓口担当者を決め、社内に周知する
- 窓口担当者同士が月1回程度、簡単に情報交換できる場(短いミーティングやチャットのスレッドで十分)を設ける
- 新しいAIサービスの利用希望が出た場合は、窓口担当者経由で総務へ相談するフローを徹底する
この体制ができると、部署ごとにバラバラに広がってしまった状態から、部署の特性を活かしながらも全社的な統制が効いた状態へと移行できます。
次のステップ
部署横断の実態把握と統一ルールの骨格ができたら、次は実際にルールを1枚にまとめて運用に落とし込む段階です。専任の情シス担当がいない前提での最低限のルールの作り方は情シス不在でも作れる最低限の生成AI利用ルール1枚で解説しています。
また、特に総務・経理部門は顧客情報を扱う機会が多く、入力してはいけない情報が入り込んでいないかの確認が優先度の高い作業になります。部署別の具体的なチェック手順は総務・経理がすでにAIへ顧客情報を入力していないか、部署別に確認するにまとめています。
ルールの整備が一段落したら、次は「守りを固めた上で、どう前向きに活用を広げるか」というフェーズに進みます。30人規模の会社が兼任体制でも着手できる業務の選び方は30人規模の会社がAIで最初に効果を出しやすい業務の選び方で扱っています。
自社の状況を客観的に把握したい場合はひとり情シス危険度診断もあわせてご活用ください。
経営者・総務担当者自身の時間配分の目安
30人規模の会社では、この一連の対応を専任の担当者が進められるわけではなく、総務担当者や経営者が本業と兼任しながら進めることになります。無理のない時間配分の目安を示しておきます。
- 横断調査(ヒアリング+マトリクス作成): 部署数×30分程度のヒアリング時間に加え、集約作業に半日程度。1〜2週間かけて分散して進めれば、本業への影響は最小限に抑えられます
- たたき台作成: まとまった時間が半日〜1日取れるタイミングで一気に作成するのが効率的です。細切れの時間で少しずつ進めると、全体の一貫性が失われやすくなります
- 検討会・合意形成: 部署責任者を集める場は1時間程度に区切り、その後の部署別補足の提出は各責任者の裁量に委ねることで、総務担当者自身の拘束時間を抑えられます
- 周知・運用開始後のフォロー: 定例のミーティングや朝礼など、既存の場に乗せる形にすれば、新たに時間を確保する必要はありません
すべての工程を総務担当者一人で抱え込もうとすると、本業に支障が出るだけでなく、ルール策定自体が長期化してしまいます。部署責任者に一部の作業(部署別補足の作成など)を分担してもらう前提で全体のスケジュールを組むことが、兼任体制でこの調整を無理なく進めるコツです。
まとめ: バラバラな実態を「地図」にしてから統一する
30人規模の会社で複数部署に生成AI利用が広がってしまった状態は、決して珍しいことではなく、組織が拡大する過程で自然に起きる現象です。重要なのは、この状態を「まずい」と焦って一律の厳しいルールを押し付けることではなく、部署ごとの実態を横断的に把握し、1つのマトリクスとして「地図」にしてから、共通ルールと部署別補足という2層構造で統一していくことです。
部署責任者を巻き込みながら合意形成を進めることで、押し付けられたルールではなく、現場が納得して守れるルールに近づきます。総務担当者や経営者がすべてを抱え込む必要はなく、各部署に窓口担当者を置く体制を作ることで、兼任のままでも持続可能な運用に落ち着けることができます。

