相見積もりを取ろうと決めたものの、本業が7割、情シス業務は3割という兼任の立場では、複数社に問い合わせて、打ち合わせの日程を調整し、返ってきた見積もりを比較するという一連の作業に、まとまった時間を割くこと自体が難しいのが実情です。専任の情シス担当であれば数週間かけてじっくり比較できる作業も、兼任担当者にとっては「本業の合間に、いかに手数を減らして回すか」という時間管理の問題そのものになります。

相見積もりの取り方そのもののマナーや、金額以外にどんな観点で比較すべきかという論点は、すでに別記事で丁寧に解説されています。この記事では、その内容を踏まえたうえで、1人で・兼任しながら・限られた時間の中で相見積もりを最後まで回しきるための、具体的な作業フローとテンプレートを提示します。

この記事で分かること

30〜100人規模でひとり情シスを担う人が、1人で相見積もりを回すために必要な実務手順を、時系列に沿って解説します。

  • 兼任のスケジュールの中に相見積もりの作業をどう組み込むか
  • 何社に、どんな順番で、どう問い合わせるのが効率的か
  • 各社に同じ条件で伝えるための「依頼テンプレート」の作り方
  • 返ってきた見積もりを1人でも短時間で比較できる表の作り方
  • 上司や決裁者への報告をどう簡潔にまとめるか

金額以外に何を比較すべきかという評価観点そのものの解説は範囲外とし、1人で作業を最後まで回しきるための段取りに絞って解説します。

なぜ「1人で回す」ことがこれほど難しいのか

専任の情シス担当がいる会社であれば、相見積もりの取得は業務時間の中で完結する当たり前の作業です。しかし30〜100人規模でひとり情シスを兼任している場合、事情はまったく異なります。本業である経理や総務の仕事は待ってくれない一方、開発会社とのやり取りは相手のスケジュールにも左右されるため、両者の時間配分を自分でコントロールしなければなりません。

さらに厄介なのは、相談できる相手が社内にいないことです。専任チームがあれば「この会社の対応どう思う」と隣の同僚に聞けますが、兼任担当者は自分ひとりの判断で全社とのやり取りを進め、比較し、結論を出す必要があります。中小企業庁の調査でも、中小企業がDXを進める際の課題として人材不足が繰り返し指摘されていますが、相見積もりという地味な実務作業ほど、この「人手のなさ」がそのまま作業時間の圧迫につながります。だからこそ、勢いや根性で乗り切ろうとするのではなく、最初から時間を圧縮する型を用意しておくことが重要になります。

まず「かけられる時間」を先に見積もる

相見積もりを始める前に、自分が情シス業務にどれくらいの時間を割けるかを、大まかにでも把握しておくことをおすすめします。本業と兼任している場合、「毎週何曜日の何時から何時まで情シス業務に充てられるか」を自分の中で決めておかないと、相見積もりの作業は本業の繁忙期に押し流されて止まってしまいがちです。

目安として、相見積もりを3社から取り、比較表を作って報告するまでの作業には、合計でおおよそ8〜12時間程度が必要になります。これを1週間に集中させるのではなく、週に2〜3時間ずつ、3〜4週間に分散させるイメージで計画すると、兼任の立場でも無理なく進められます。

全体の作業フロー

相見積もりを1人で回す作業は、大きく4つのフェーズに分けられます。

  1. 準備フェーズ: 依頼内容を整理し、問い合わせ先候補をリストアップする
  2. 問い合わせフェーズ: 複数社に同じ条件で連絡し、打ち合わせを設定する
  3. 収集フェーズ: 各社との打ち合わせをこなし、見積もりを受け取る
  4. 比較フェーズ: 見積もりを表にまとめ、社内に報告する

それぞれのフェーズでどれだけの時間がかかるか、あらかじめ把握しておくと、本業のスケジュールとの調整がしやすくなります。

フェーズ目安時間主な作業
準備2〜3時間依頼テンプレート作成、候補企業のリストアップ
問い合わせ1〜2時間メール送付、日程調整(複数社分をまとめて)
収集1社あたり1〜1.5時間打ち合わせ参加、見積もり受領
比較2〜3時間比較表作成、社内報告資料の作成

準備フェーズ: 依頼テンプレートを先に1つだけ作る

1人で複数社に問い合わせる際、最も時間を無駄にしやすいのが「各社に対して毎回異なる説明をしてしまう」ことです。同じ内容を毎回口頭やメールで一から説明していると、時間がかかるだけでなく、説明の粒度が会社ごとにばらつき、返ってくる見積もりの前提条件も揃わなくなります。

これを避けるために、最初に一度だけ、次のような依頼テンプレートを作成しておきます。

件名: システム開発のお見積もりについて(〇〇株式会社)

平素よりお世話になっております。〇〇株式会社の〇〇と申します。
下記の内容でシステム開発のお見積もりをお願いしたく、ご連絡いたしました。

【背景・課題】
(現状どんな業務課題があり、なぜシステム化を検討しているか、3〜5行程度)

【実現したいこと】
(箇条書きで3〜5項目、優先順位が分かれば明記)

【想定予算感】
(レンジで可。「〇〇万円〜〇〇万円程度を想定」等)

【希望スケジュール】
(いつ頃までに稼働させたいか)

【自社の状況】
・従業員数: 〇〇名
・情シス体制: 兼任1名
・現在の運用方法: (Excel/紙/既存システム等)

上記につきまして、可能であればオンラインで30分程度、
お打ち合わせのお時間をいただけますと幸いです。
ご検討のほどよろしくお願いいたします。

このテンプレートを1つ作っておけば、各社への問い合わせは宛先と文面の微調整だけで済み、問い合わせフェーズ全体を1〜2時間程度に圧縮できます。稟議の事前打診で使った資料と重なる部分も多いため、稟議準備の際に作った現状課題の説明文をそのまま流用できると、さらに時間を節約できます。

何社に依頼するのが現実的か

相見積もりを何社から取るべきかという論点そのものは別記事で詳しく扱われていますが、兼任で1人で回す場合の現実的な選択として、2〜3社に絞ることを軸に考えるとよいでしょう。

4社以上に同時に声をかけると、打ち合わせの日程調整だけで本業を圧迫し、各社への対応も雑になりがちです。逆に1社だけでは比較にならず、稟議の場で「なぜその会社なのか」という質問に答えられなくなります。2〜3社であれば、1社あたり1〜1.5時間の打ち合わせを含めても、合計で半日程度に収まり、兼任のスケジュールでも現実的に回せます。

候補となる会社の探し方は、予算帯によって現実的な選択肢が変わってきます。数十万円〜数百万円規模の案件でどんな探し方が現実的かは、予算数十万〜数百万円規模のシステム化案件、外注先探しの現実的な進め方で扱っています。

会社の規模帯をあえて揃えない

3社に依頼する際、同じような規模・実績の会社ばかりを選んでしまうと、比較しても金額と対応の差がほとんど出ず、比較する意味が薄れてしまいます。あえて大手・中堅・小規模チームやフリーランスといった異なる規模帯から1社ずつ選ぶと、金額の幅や提案スタイルの違いが明確になり、自社にとって何が重要な判断軸なのかが見えやすくなります。開発会社の規模帯ごとの強みとリスクについては、開発会社の選び方: 規模別・得意分野別の見極めで詳しく整理されています。

ただし、個人のフリーランス開発者に声をかける場合は、法人の開発会社とは異なる注意点があります。個人開発者・フリーランスへの発注のメリットとリスクは個人開発者・フリーランスに頼むのはあり?リスクと向き不向きで扱われているため、候補に入れる前に目を通しておくとよいでしょう。特に、事業の継続性(担当者が体調を崩した場合の代替対応など)は、法人の開発会社であれば組織として吸収できる部分ですが、個人の場合はそのままリスクとして残ります。

問い合わせフェーズ: 同じ日程枠でまとめて対応する

打ち合わせの日程調整も、1社ずつ個別にやり取りしていると本業の合間を縫うのが難しくなります。効率化のコツは、自分のカレンダーの中で「情シス業務に充てる曜日・時間帯」をあらかじめ決めておき、その枠の中で複数社の打ち合わせをまとめて設定することです。

例えば「毎週水曜日の15時〜17時は情シス業務の時間」と決めておけば、3社への問い合わせでも「水曜15時、水曜16時、翌週水曜15時」のように同じ枠内で処理でき、本業のスケジュールへの影響を最小限に抑えられます。日程調整ツールを使える場合は、候補日をまとめて提示できるリンクを用意しておくと、メールの往復回数も減らせます。

移動時間をなくすためオンライン打ち合わせを基本にする

兼任担当者にとって、打ち合わせのために外出する移動時間は、想像以上に大きな負担になります。1社あたり訪問往復で1〜2時間かかるとすれば、3社分で3〜6時間が移動だけで消えてしまい、これは本業のスケジュールを直接圧迫します。

初回の打ち合わせは、原則としてオンライン会議を基本にすることをおすすめします。開発会社側もオンラインでの初回打ち合わせに慣れていることが多く、よほど特殊な業種でない限り、最初の段階で対面を必須にする必要はありません。契約直前の最終確認や、実際に発注する1社との詳細な打ち合わせなど、本当に対面が必要になるタイミングを見極めて、そこだけ訪問するという使い分けにすると、相見積もりの段階全体を大幅に効率化できます。

危険な兆候を早期に見抜いてふるいにかける

3社すべてに最後まで同じ熱量で対応する必要はなく、打ち合わせの早い段階で「この会社は候補から外す」という判断ができれば、その分の時間を他社に回せます。危険な開発会社によく見られるサインとして、次のような兆候が挙げられます。

  • 課題や要望をほとんど聞かずに、いきなり「うちなら安くできます」と金額だけを強調してくる
  • 質問への回答が曖昧で、契約形態(請負か準委任か)や保守体制について明確に答えない
  • 契約書のひな形を見せることを渋る、あるいは「後で決めましょう」とはぐらかす
  • 極端に短い納期を、根拠なく提示してくる

こうした兆候が複数見られた会社は、比較表に残しつつも優先順位を下げ、限られた時間を他の候補に振り向ける判断をしてよいでしょう。危険な開発会社の兆候については、危険な開発会社のサイン10選でより網羅的に整理されています。

収集フェーズ: 打ち合わせで聞くことを固定する

各社との打ち合わせでは、聞くべき質問をあらかじめ固定しておくと、比較がしやすくなります。開発会社との初回打ち合わせで聞くべき質問については、開発会社との初回打ち合わせで聞くべきことで「進め方」「体制」「契約・お金」「保守・その後」の4観点が整理されています。1人で複数社に同じ質問を投げかける場合は、この4観点をメモ用紙やスプレッドシートに固定のチェックリストとして用意しておき、各社の回答をその場でその欄に書き込んでいく方式にすると、後から記憶を頼りに比較する手間がなくなります。

打ち合わせ直後、記憶が鮮明なうちに次の3点だけでも簡単にメモしておくことをおすすめします。

  • 相手の説明の分かりやすさ(専門用語をこちらのレベルに合わせて説明してくれたか)
  • レスポンスの速さ(打ち合わせ後の見積もり提出までの目安期間)
  • 気になった発言(強引な営業トークや、逆に不安を感じさせる曖昧な回答があったか)

これらは見積書には出てこない情報ですが、実際に発注した後の関係性を左右する重要な判断材料になります。

比較フェーズ: シンプルな一覧表で十分

見積もりが出揃ったら、比較表を作成します。凝ったフォーマットを作る必要はなく、次のような項目をスプレッドシートに並べるだけで、1人でも短時間で比較できます。

項目A社B社C社
初期費用
保守費用(月額)
契約形態(請負/準委任)
開発期間の目安
提案の特徴
懸念点

見積書に記載された内訳(工数・単価・バッファなど)の読み方に自信がない場合は、システム開発の見積書、この内訳の見方で損を防ぐを先に確認しておくと、金額欄を埋める際の判断がしやすくなります。契約形態が請負契約か準委任契約かによって、支払いのタイミングやリスクの所在が変わるため、この欄も必ず埋めておきます。

打ち合わせと打ち合わせの間に「間延び」させない工夫

3社への問い合わせを同じ週にまとめて送ったとしても、各社の返信スピードや日程調整の都合で、実際の打ち合わせが2〜3週間にわたって間延びしてしまうことがあります。この間延びは、兼任担当者にとって二重の負担になります。ひとつは、本業の合間を縫って何度も「情シスモード」に頭を切り替える回数が増えること。もうひとつは、最初の打ち合わせの内容を忘れかけた頃に最後の打ち合わせを迎え、比較の精度が落ちることです。

これを防ぐには、次の2つの工夫が有効です。

  1. 打ち合わせ直後に3行だけメモを残す: 前述の3点メモ(分かりやすさ・レスポンスの速さ・気になった発言)を、記憶が新しいうちにスプレッドシートへその場で入力する習慣をつけます。
  2. 依頼のタイミングをできるだけ揃える: 最初の問い合わせメールを同じ日にまとめて送ることで、各社の初動のスピード感の違いも比較材料になります。返信が極端に遅い会社は、発注後のレスポンスの遅さを予感させるサインでもあります。

金額差が大きいときの一人での判断の仕方

複数社の見積もりを並べたとき、金額に2倍・3倍といった差が出ることは珍しくありません。専任の情シス担当であれば、この差の原因を各社に個別にヒアリングして丁寧に詰めていく時間が取れますが、兼任の立場では毎回全社に確認を取る余裕がないこともあります。

そうした場合、最も安い会社と最も高い会社の2社だけに絞って、金額差の理由を簡潔に聞くという進め方が現実的です。「他社と比較して金額差が大きいのですが、どのような違いによるものか教えていただけますか」という一言で、保守体制の手厚さなのか、開発体制の規模なのか、単に安請け合いなのかが見えてくることがあります。極端に安い見積もりの背景を確認せずに選んでしまうと、後になって追加費用が発生する、あるいは開発途中で対応が滞るといったトラブルにつながるため、金額だけで即決するのは避けるべきです。

契約形態の違いが比較を難しくする理由

相見積もりを比較していると、A社は請負契約、B社は準委任契約というように、そもそもの契約形態が会社によって異なる提案をしてくることがあります。この違いを理解せずに金額だけを比較すると、正しい判断ができません。

請負契約は成果物の完成に対して報酬が支払われる形態で、仕様が固まっている案件に向いています。一方、準委任契約は業務の遂行そのものに対して報酬が支払われる形態で、途中で仕様変更が起きやすい案件や、要件がまだ固まりきっていない段階での発注に向いています。前任者からの引き継ぎがなく、要件そのものが手探りの状態でシステム化を進める場合、最初から請負契約で厳密に固めるより、準委任契約で走りながら調整できる形の方が現実に即していることも少なくありません。この違いと、どちらを選ぶべきかの判断基準は請負契約と準委任契約の違い:システム開発の契約形態はどちらを選ぶべきかで詳しく解説されています。比較表の「契約形態」欄を単なる記録にとどめず、この判断軸を踏まえて評価すると、金額の見た目だけに引きずられない比較ができます。

保守費用も同じ土俵で比較する

初期費用の比較に気を取られがちですが、兼任担当者にとって本当に重要なのは、発注後も長く付き合っていくことになる保守費用と保守体制です。安い初期費用を提示してきた会社が、保守費用や対応範囲について曖昧にしか答えられなかった場合、後から想定外のコストが発生するリスクがあります。

比較表の「保守費用(月額)」欄は、金額だけでなく「何が月額費用に含まれるか」(不具合対応のみか、軽微な機能追加も含むか、対応時間の上限はあるか)まで踏み込んで確認し、簡単なメモを添えておくことをおすすめします。保守契約の内容を事前に確認しておくべき理由については、保守契約の内容を契約前に確認すべき理由でより詳しく扱われています。

社内報告は1枚のスプレッドシートで完結させる

比較表ができたら、上司や決裁者への報告資料を別途作り込む必要はありません。多くの場合、先ほどの比較表に「推奨案とその理由」を1〜2行加えるだけで、報告資料として機能します。

推奨: B社。初期費用はA社よりやや高いが、保守体制と契約形態(準委任)の柔軟性を評価。C社は金額は最も安いが、体制欄で1名体制と回答があり、対応の継続性に懸念あり。

この程度の簡潔さで十分です。稟議の場で詳細な質問が出た場合に備えて、比較表そのものは手元に残しておき、聞かれたら都度参照できるようにしておきます。稟議の通し方については30-100人規模で初めて外部に開発を発注するときの社内稟議の通し方で扱っています。

トラブル発生時の連絡ルートも比較材料に加える

打ち合わせの中で見落とされがちですが、発注後にトラブルが起きた際の連絡ルート、つまりエスカレーションの仕組みについても、可能であれば各社に確認しておくと、後々の安心材料になります。窓口担当者が1人しかおらず、その人が不在の場合に誰が対応するのか分からない体制の会社と、複数人でチーム対応する体制が整っている会社とでは、トラブル時の初動の速さが大きく異なります。特に自社がSLA(サービス品質保証)のような明確な合意を結ばない前提で発注する小規模案件では、この確認を怠ると、いざという時に「誰に連絡すればよいか分からない」という事態に陥りかねません。比較表の余白にでも一言メモしておくと、最終的な判断材料が増えます。

よくある失敗と回避策

失敗1: 依頼内容を会社ごとに変えてしまう

テンプレートを作らずに毎回口頭で説明すると、伝える情報の粒度がばらつき、見積もりの前提条件も揃いません。最初に一度だけテンプレートを作る手間を惜しまないことが、後の比較のしやすさに直結します。

失敗2: 全社に同じ熱量で対応しようとする

兼任の立場で3社すべてに同じだけの時間をかけようとすると、本業に支障が出ます。明らかに条件が合わない会社が判明した時点で早めに絞り込み、有力な1〜2社に時間を集中させる判断も必要です。

失敗3: 断りの連絡を後回しにする

発注しないと決めた会社への連絡を先延ばしにすると、相手企業に無駄な待機時間を強いることになります。丁寧な断りの連絡は、業界内での評判にも関わるため、決定次第できるだけ早く伝えるようにします。フリーランスの個人開発者に依頼した場合は、2024年11月に施行されたフリーランス新法により、発注者側に取引条件の書面明示や報酬支払期日の設定といった義務が課されている点にも注意が必要です。

失敗4: 比較を先延ばしにして記憶が薄れる

すべての見積もりが出揃ってから比較しようとすると、最初の打ち合わせの印象が薄れてしまい、結局は金額だけで判断することになりがちです。各社との打ち合わせが終わるたびに、その場で比較表への入力を済ませておく習慣が、最終的な判断の質を左右します。

相見積もり後に残るタスクを見落とさない

比較表を作って社内報告を終えると、つい一区切りついた気持ちになりますが、実際にはここから発注先を確定させ、契約の内容を詰めるという次のフェーズが待っています。特に、発注しないと決めた会社への断りの連絡、選定した1社との詳細な要件のすり合わせ、そして契約前の最終確認という3つのタスクが、比較フェーズの直後に控えていることを忘れないようにします。

発注前に契約・権利・データ・保守の4領域を確認するチェックリストは、発注前チェックリスト(契約・権利・データ・保守)としてまとめられています。相見積もりの比較が終わった段階で一度目を通しておくと、選定後の契約交渉で見落としを防げます。

兼任担当者だからこそ意識したいペース配分

専任の情シス担当であれば、相見積もりの期間中は他の業務を横に置いて集中できますが、兼任の立場ではそうはいきません。本業の繁忙期と相見積もりの作業時期が重なってしまうと、返信が遅れたり、打ち合わせの準備が疎かになったりして、結果的に開発会社側に「対応が雑な担当者」という印象を与えかねません。

可能であれば、本業の繁忙期を避けて相見積もりのスケジュールを組む、あるいは繁忙期に差し掛かりそうな場合は早めに開発会社側へ「返信が遅れる可能性がある」と一言伝えておくといった配慮が、結果的にスムーズな進行につながります。開発会社側も、担当者が兼任であることを理解していれば、無理なペースを求めてくることは少なく、むしろ丁寧な対応を心がけてくれることが多いものです。

まとめ

1人で相見積もりを回す最大のコツは、各社への対応を「毎回一から考える」のではなく、テンプレートと固定のチェック項目によって「型」に落とし込むことです。依頼テンプレートを1つ作る、聞くことを4観点に固定する、比較表をシンプルに保つという3点を押さえれば、兼任の立場でも8〜12時間程度の作業時間で、3社の相見積もりを最後まで回しきることができます。

相見積もりは、金額を比較して安い会社を選ぶための作業ではなく、自社の要望がどこまで一般的で、どこが特殊なのかを知るための情報収集の機会でもあります。兼任で時間が限られているからこそ、闇雲に手を広げず、型を作って効率的に回すという発想を持つことが、結果的に納得感のある発注先選びにつながります。

一度この型を作っておけば、次にシステム化を検討する機会が訪れたときも、同じテンプレートと比較表の形式を使い回せます。最初の1回にかける準備の手間は、2回目以降の相見積もりを大幅に軽くしてくれる投資だと捉えて、丁寧に取り組む価値があります。

兼任という制約は、決して不利な条件だけではありません。むしろ、限られた時間の中でしか動けないという制約があるからこそ、テンプレート化・チェックリスト化という効率化の工夫が自然と身につきます。この記事で紹介した型は、相見積もり以外の場面、たとえば保守契約の更新交渉や、新しいツールの選定時にも応用できる考え方です。1人で情シス業務を回すという状況を、単なる負担としてではなく、業務を型にはめて効率化するスキルを磨く機会として捉え直してみると、日々の作業の見え方も変わってくるはずです。

参考にした一次情報

  • 公正取引委員会「フリーランス新法特設サイト」(施行日、発注企業に課される義務): https://www.jftc.go.jp/freelancelaw_2025/