営業部はSFA、経理部はクラウド会計ソフト、製造現場は独自フォーマットのExcelシート、カスタマーサポートはチケット管理ツール。10人未満の頃はほとんど存在しなかった「部署」という単位が生まれると同時に、各部署が自分たちの判断でツールを導入し始めます。それぞれの部署にとっては合理的な選択でも、会社全体で見ると、誰も全体像を把握していない「バラバラなツールの集合体」が出来上がっていきます。

このガイドでは、10-30人規模の組織に特有のこの状態を、A4一枚では収まりきらない規模感で、それでも無理なく1枚(あるいは1つのシート)で可視化する管理台帳の作り方を解説します。10人未満向けの最小構成の台帳とは異なり、複数部署・複数の意思決定者が存在する前提で設計する点がポイントです。

なぜ10-30人規模でツールがバラバラになるのか

10人未満の会社では、契約するツールの意思決定者はほぼ社長1人に集約されています。しかし社員が10人を超え、部署という単位が生まれると、各部署の責任者が独自の判断でツールを導入できる権限(あるいは実質的な裁量)を持ち始めます。これは組織が健全に成長している証でもあり、各部署が自分たちの業務効率化に主体的に取り組んでいる証拠でもあります。

問題は、この主体性が「全社的な可視化の仕組み」を伴わないまま発揮されることです。営業部長が「このSFAを使えば商談管理が楽になる」と判断してクレジットカードで契約し、経理部が「この会計ソフトのほうが仕訳が楽」と別のツールに切り替え、それぞれが良かれと思って行動した結果、会社全体では「どの部署が」「何を」「いくらで」契約しているかを誰も把握していない状態になります。

この状態を放置すると、次のような問題が表面化してきます。

  • 似たような機能を持つツールを、部署ごとに別々に契約してコストが重複している
  • 退職者のアカウントが、総務の把握していないツールに残ったままになっている
  • セキュリティ設定が甘いツールに、機密性の高いデータが入力されている
  • 契約更新のタイミングが誰にも分からず、自動更新で気づかないうちに費用が発生し続けている

これらはいずれも、「誰も全体を見ていない」ことに起因する問題です。管理台帳は、この空白を埋めるための最初の一歩です。

10人未満向けA4一枚台帳との違い

10人未満の会社向けには、A4一枚に収まる最小構成の台帳が適しています(社員10人未満で今すぐ作るべき「IT台帳」はA4一枚でいいを参照)。しかし10-30人規模になると、管理対象の数が増え、かつ意思決定者が複数人に分散するため、A4一枚の発想をそのまま延長しても機能しなくなります。

主な違いは次の3点です。

観点0-10人向け10-30人向け
管理対象の数10〜20件程度30〜80件程度になることが多い
意思決定者社長1人各部署の責任者に分散
更新の主体社長本人が更新各部署の担当者が自分の分を更新する仕組みが必要

この違いから、10-30人規模の台帳では「誰が更新責任を持つか」という項目を新たに加える必要があります。A4一枚の台帳では省略できていた項目ですが、複数の意思決定者が存在する規模では、これを明記しないと台帳自体がすぐに形骸化してしまいます。

台帳の基本構成: 8項目

10-30人規模の管理台帳に必要な項目を整理すると、次の8項目に集約されます。

項目記載内容記入例
① ツール/サービス名何のサービスか○○SFA
② 導入部署どの部署が主に使っているか営業部
③ 用途何のために使っているか商談管理・顧客リスト管理
④ 管理者アカウントログイン用のメールアドレスsales-admin@example.com
⑤ 部署内の更新責任者その部署で台帳更新を担う人営業部 山田
⑥ 契約者名義・支払い方法法人契約か、誰のカード払いか法人契約・法人カード
⑦ 月額費用(概算)おおよその月額15,000円
⑧ 契約更新月・解約条件更新のタイミングと解約時の注意毎年4月・解約は60日前通知

この8項目を、会社が実際に使っているツールの数だけ行を追加していきます。10-30人規模であれば、洗い出した結果、30〜80行程度になることが多い印象です。A4一枚には収まらない分量になるため、スプレッドシート形式での管理を前提にします。

ステップ1: 各部署から「使っているツール」を申告してもらう

台帳作成の最初のステップは、総務や情シス担当者が一方的に調べるのではなく、各部署から自己申告してもらう形で情報を集めることです。部署の数が増えた10-30人規模では、総務担当者がすべてのツールを個別に調査するのは現実的ではありません。

各部署に依頼する際は、次のようなシンプルな質問票を用意すると回答が集まりやすくなります。

  1. 現在、部署として契約・利用しているシステム/アプリ/ツールは何がありますか(無料プランも含む)
  2. それぞれ、主に誰が管理者になっていますか
  3. 支払いは法人契約ですか、それとも個人のカードで立て替えていますか
  4. だいたいの月額費用はどれくらいですか(分からなければ概算で構いません)

この質問票を配布する際、「監視するためではなく、会社全体でコストと責任を正しく把握するため」という目的を明確に伝えることが重要です。目的が曖昧なまま調査だけを進めると、各部署が「勝手に使っているのがバレると怒られるのでは」と警戒し、正直な申告が得られにくくなります。

ステップ2: 自己申告だけでは見つからないツールを補足調査する

自己申告だけでは、実は把握しきれないツールが一定数残ります。特に、個人が業務効率化のために勝手に導入した無料ツールや、部署の誰かが個人アカウントで契約しているものは、「これは会社の管理対象だ」という意識自体が本人にないため、申告から漏れやすい傾向があります。

補足調査として有効なのは、会社名義のクレジットカードの明細を確認する方法です。毎月の引き落とし明細に、心当たりのないサービス名が並んでいることは珍しくありません。また、経費精算のデータを遡って確認すると、個人が立て替えて経費申請しているSaaSの利用料が見つかることもあります。

こうした形で申告されずに使われているツールは、いわゆるシャドーITと呼ばれる状態に該当します。シャドーITの具体的な見つけ方と対処の流れについては、「誰かが個人契約したツール」が業務の中心になっていた。見つけたらどうするで詳しく解説されていますので、あわせて参照してください。

ステップ3: 集めた情報を台帳に集約する

各部署からの回答と補足調査で集まった情報を、8項目のフォーマットに沿って1つの台帳にまとめていきます。この段階で重要なのは、部署ごとに別々のシートに分けるのではなく、全社で1つの台帳(1つのスプレッドシート内の1シート)に集約することです。

部署ごとにシートを分けてしまうと、「会社全体で似たようなツールを重複契約していないか」「全社の月額費用の合計はいくらか」といった横断的な視点での分析ができなくなります。10-30人規模の台帳整備の目的は、まさにこの「部署をまたいだ全体像の可視化」にあるため、1枚に集約する形にこだわってください。

台帳が完成したら、次のような視点で全体を見渡してみましょう。

  • 似た用途のツールを複数の部署が別々に契約していないか
  • 個人名義・個人のカード払いになっているものはどれだけあるか
  • 月額費用の合計はいくらになるか(想定より多いことがほとんどです)
  • 管理者アカウントが退職済みの人物になっていないか

ステップ4: 更新のルールを決める

台帳は作って終わりではなく、継続的に更新されて初めて意味を持ちます。10-30人規模の台帳で特に重要なのは、「誰が更新するか」を部署単位で明確に決めておくことです。総務担当者1人がすべての更新を担うのではなく、各部署の更新責任者(項目⑤)が、自分の部署に関する行の更新を担当する仕組みにします。

更新のタイミングとしては、次の2つのルールを組み合わせるのが現実的です。

  • 新規契約時のルール: 新しいツールを契約したら、契約したその場で台帳に1行追加する(後回しにすると忘れられる)
  • 定期棚卸しのルール: 四半期に1回など、決まったタイミングで各部署が自分の担当行を見直し、解約済み・変更済みのものがないか確認する

この2つのルールを社内の共通認識として定着させるには、口頭での周知だけでなく、新規契約の際に経理への支払い申請と台帳更新をセットの手続きにしてしまう方法が効果的です。支払い申請をしなければ経費として処理されない、という仕組みと連動させることで、台帳への追記漏れを構造的に防げます。

台帳整備と申請フローを連動させる

台帳の更新を新規契約のたびに徹底させるためには、そもそも新しいツールを導入する際の申請フロー自体を整備しておくことが有効です。申請フローがあれば、「申請時に台帳への記載を必須項目にする」形で、台帳更新を自然な業務プロセスに組み込めます。

申請フローがないまま台帳だけを整備しようとすると、既存のツールは棚卸しできても、今後新たに導入されるツールがまた同じように把握漏れになってしまいます。過去の可視化(台帳)と将来の予防(申請フロー)は、セットで整備することで初めて効果を発揮します。具体的な申請フローの設計方法は、部署が増えるたびにツールが増える会社のIT導入申請ルールの作り方で解説していますので、台帳整備と合わせて着手することをお勧めします。

台帳整備でよく見つかる「困った状態」とその対処

実際に台帳を整備してみると、いくつかの典型的な「困った状態」が見つかります。それぞれへの対処法を整理しておきます。

「管理者アカウントが、すでに退職した社員の個人メールアドレスになっている」

このケースは、まず該当のツールにログインできるか確認し、可能であれば速やかに現在在籍している社員の会社アドレスへ管理者権限を移してください。ログインできない場合は、サービス提供元のサポート窓口に、法人としての契約者であることを証明する書類(契約書、請求書など)を提示して権限移譲を依頼する必要があります。

「同じような機能のツールを、営業部と製造部がそれぞれ別々に契約していた」

このケースは、すぐに一方を解約するのではなく、まず双方の使い方の違い(必要な機能、価格帯、使い勝手の好み)を確認してから、統合するかどうかを判断してください。拙速に一本化しようとすると、片方の部署の業務に支障が出る可能性があります。

「個人のクレジットカードで支払われていて、法人契約になっていない」

このケースは、法人契約への切り替えが可能かをサービス提供元に確認し、可能であれば速やかに切り替えてください。個人名義のまま契約が続くと、その個人が退職した際に契約自体が宙に浮いてしまうリスクがあります。個人名義の契約を法人へ切り替える際の考え方は、契約者名義の観点で社長しか知らないパスワードとアカウント、10人になる前に洗い出す方法でも触れられている考え方が応用できます。

台帳作成にかかる時間の目安

10-30人規模での台帳整備にかかる時間の目安を示します。部署数や既存のツール数によって変動しますが、おおよそ次のようなプロセスを想定してください。

  1. 各部署への質問票配布・回収(1〜2週間): 依頼から回答期限までの猶予を持たせる
  2. 補足調査(数日〜1週間): クレジットカード明細・経費精算データの確認
  3. 台帳への集約(半日〜1日): 集まった情報をフォーマットに沿って整理
  4. 全体の分析・重複や漏れの洗い出し(半日程度): 気になる点をリストアップ
  5. 各部署への確認・是正(1〜2週間): 見つかった問題点の確認と対応

トータルで見ると、1ヶ月〜1.5ヶ月程度が現実的な目安です。部署数が多い、あるいは各部署の回答が集まりにくい場合は、もう少し時間がかかることも想定しておいてください。焦って不完全な情報のまま台帳を確定させるより、多少時間をかけてでも実態に近い情報を集めることを優先してください。

セキュリティの観点から見た台帳の価値

管理台帳は、コスト管理の観点だけでなく、セキュリティの観点からも重要な役割を果たします。IPA「中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン」でも、資産の把握が情報セキュリティ対策の出発点として位置づけられており、付録として資産管理台帳のサンプルが提供されています。何を守るべきかが分からなければ、適切な対策を講じることもできません。

10-30人規模で特に注意したいのは、部署ごとに導入したツールの中に、顧客情報や個人情報を扱うものが混じっているケースです。台帳の項目に「取り扱う情報の機密度」を簡易的な区分(高・中・低など)で追加しておくと、後々セキュリティ対策の優先順位をつける際にも役立ちます。すべてのツールに一律の厳しい管理を求めるのではなく、機密度に応じてメリハリをつけた対応ができるようになります。

属人化していた把握業務を台帳に置き換える

多くの会社では、これまで「誰がどのツールを使っているか」という情報を、総務担当者や特定の社員が頭の中だけで把握していました。この状態自体が、暗黙知に依存した属人化の一種です。台帳を整備することは、この暗黙知を会社の共有資産に変換する作業でもあります。

暗黙知に依存した業務がツールの管理以外にもどれだけ存在するかを洗い出す視点については、「入社時に教わった通り」で回っている業務の属人化リスクの見つけ方で詳しく扱っています。ツールの台帳化をきっかけに、他の業務の属人化にも目を向けてみることをお勧めします。

台帳の存在自体が単一障害点にならないように

台帳を整備したら、その台帳自体の保管場所と閲覧権限にも注意を払ってください。せっかく作った台帳が、特定の1人のパソコンのローカルフォルダにしか保存されていない、あるいはその人しかアクセス権限を持っていない状態では、台帳という「仕組み」自体が新たな単一障害点になってしまいます。

クラウド上の共有フォルダに保存し、総務担当者だけでなく、各部署の更新責任者と経営者もアクセスできる状態にしておいてください。誰が退職・異動しても台帳へのアクセスが途切れないようにしておくことが、この取り組みを長く機能させる条件です。総務1人に依存した業務がどれだけあるかを網羅的に確認したい場合は、総務1人が退職したら止まる業務を今のうちに数える方法もあわせて参照してください。

完璧を目指さず、まず全体像を掴むことを優先する

最後に、台帳整備に取り組む際の心構えについて触れておきます。10-30人規模の会社で、いきなり完璧な台帳を作ろうとすると、情報収集の段階で挫折しやすくなります。8項目すべてを最初から完全に埋めようとせず、まずは「①ツール名」「②導入部署」「③用途」の3項目だけでもいいので、社内に存在するツールの全体像をざっくりと把握することを優先してください。

全体像さえ掴めれば、そこから優先度の高いもの(機密情報を扱うもの、費用が大きいもの、契約者名義に問題があるものなど)から順に詳細を埋めていくアプローチが現実的です。台帳は一度で完成させるものではなく、会社の成長とともに継続的に育てていくものだと捉えてください。

台帳の記入例: 実際のイメージ

抽象的な説明だけでは実感が湧きにくいため、社員25人・4部署(営業・経理・製造・カスタマーサポート)を持つ架空の会社を例に、実際の記入イメージを示します。

ツール/サービス名導入部署用途管理者アカウント更新責任者契約者名義・支払い月額(概算)更新月・解約条件
○○SFA営業部商談管理sales-admin@example.com営業部 山田法人契約・法人カード15,000円毎年4月・30日前通知
△△会計経理部会計・請求書発行keiri@example.com経理部 佐藤法人契約・銀行振込8,000円毎月自動更新
□□在庫表(Excel)製造部在庫管理共有フォルダのみ製造部 鈴木0円
××チケット管理カスタマーサポート問い合わせ対応support-admin@example.comサポート 田中個人カード(要変更)3,000円毎月自動更新
◇◇名刺管理営業部(一部)名刺のデータ化個人アカウント未定個人(無料プラン)0円

この例からも分かる通り、実際に台帳を作ってみると、契約者名義が個人のままになっているもの、更新責任者が「未定」のままのものなど、すぐには完璧に埋まらない行がいくつも出てきます。これは失敗ではなく、台帳を作る過程で初めて可視化される「これまで見えていなかった課題」です。むしろ、こうした空欄や「要変更」の状態が明らかになること自体が、台帳作成の大きな成果といえます。

台帳整備を阻む心理的なハードルへの対処

台帳整備を進めようとすると、各部署から様々な形での抵抗や消極的な反応に直面することがあります。よくある反応とその対処法を整理しておきます。

「今使っているツールを申告すると、使うのをやめさせられるのでは」

この不安は非常によくあるものです。台帳整備の目的があくまで「可視化」であり、「即座に禁止・解約すること」ではないことを、繰り返し明確に伝える必要があります。実際に問題が見つかった場合も、いきなり使用中止を命じるのではなく、部署の担当者と相談しながら段階的に是正していく姿勢を示すことが、協力を得るための鍵になります。

「申告する作業自体が面倒くさい」

質問票への回答が数分で終わる程度の簡易さになっているか、改めて確認してください。項目数が多すぎたり、専門的な用語が多用されていたりすると、それだけで回答への心理的ハードルが上がります。分からない項目は「不明」と書いてもらって構わない、という前提を示すことも、回答率を上げる工夫の一つです。

「そもそも何を申告すればいいのか分からない」

「業務で使っているツール」の定義が曖昧だと、この反応が起こりやすくなります。無料プランのメモアプリやスケジュール管理アプリなど、「業務に使っているかどうか微妙なもの」も含めて申告してほしい旨を、具体例を挙げながら伝えるとよいでしょう。

台帳整備後、経営者が確認すべき3つの数字

台帳が完成したら、経営者はまず次の3つの数字に注目してください。

  1. 契約しているツールの総数: 想定より多いことがほとんどです
  2. 月額費用の合計: 部署ごとの契約が積み重なった結果、想像以上の金額になっているケースが多く見られます
  3. 個人名義・個人カード払いになっている契約の件数: この数が多いほど、退職リスクに対する会社の脆弱性が高いことを意味します

これら3つの数字は、台帳整備がもたらす最も直接的な経営情報です。特に2つ目の月額費用の合計は、コスト最適化の議論を始める上で強力な材料になります。多くの経営者は、部署ごとに個別に承認してきたツールの費用が、合算するとこれほどの金額になっているとは想像していません。

台帳整備をきっかけにしたコスト最適化の進め方

台帳が完成し、契約数と月額費用の合計が可視化されたら、次のステップとしてコスト最適化に取り組む会社も多くあります。ただし、台帳整備の直後にいきなり解約や統合を進めるのは避けてください。台帳はあくまで「現状を正確に把握するための道具」であり、そこから先の意思決定は、各ツールの利用実態を丁寧に確認した上で行う必要があります。

コスト最適化を進める際の基本的な順序は、次の通りです。

  1. 利用状況の確認: 台帳に載っているツールについて、実際にどれくらいの頻度・人数で使われているかを各部署に確認する
  2. 重複の特定: 似た機能を持つツールが複数契約されていないかを洗い出す
  3. 統合可否の検討: 重複が見つかった場合、どちらか一方に統合できるか、各部署の意見を聞きながら検討する
  4. 解約手続き: 統合や不要と判断されたツールについて、解約条件(通知期限など)を確認しながら手続きを進める

この一連のプロセスは、台帳の「⑧契約更新月・解約条件」の項目が特に重要な役割を果たします。多くのSaaSは、解約の申し出に一定の通知期限(30日前、60日前など)を設けているため、この期限を把握していないと、解約したいタイミングを逃し、無駄に1年分の契約が自動更新されてしまうことがあります。

台帳データを使ったIT予算の説明資料化

台帳に蓄積されたデータは、コスト最適化だけでなく、翌年度以降のIT関連予算を経営者に説明する際の資料としても活用できます。「なんとなくこれくらいかかっている」という感覚的な説明ではなく、部署別・用途別に費用を集計した資料を提示することで、予算の妥当性を具体的に示すことができます。

例えば、台帳のデータを部署ごとに集計すると、次のような一覧が作成できます。

部署契約ツール数月額費用合計
営業部5件32,000円
経理部3件15,000円
製造部2件4,000円
カスタマーサポート4件18,000円

このような集計表があれば、「営業部の費用が突出して高い理由」「カスタマーサポートに追加投資すべきかどうか」といった議論を、感覚ではなくデータに基づいて進められるようになります。IT予算の作り方や経営層への説明の仕方については、情シス予算の作り方と経営層への説明方法でも詳しく解説されていますので、台帳データと組み合わせて活用してください。

まとめ: バラバラなツールを「1枚の地図」に変える

10-30人規模の組織にとって、部署ごとにツールがバラバラに導入されている状態は、成長の過程で自然に起きる現象です。問題なのは、その状態を誰も可視化しないまま放置し続けることです。8項目の管理台帳を作り、各部署から情報を集め、1枚の地図として全体像を可視化することで、コストの重複、セキュリティリスク、退職者アカウントの残存といった問題に、初めて手を打てるようになります。

台帳作りは地味な作業に見えるかもしれませんが、この段階で着手しておけば、会社がさらに成長して部署が増え、ツールがさらに複雑化していく前に、しっかりとした土台を作ることができます。総務担当者1人の頭の中に散らばっていた情報が、会社全体で共有できる資産に変わる瞬間は、この規模の会社にとって大きな一歩です。自社の状況を客観的に把握したい場合はひとり情シス危険度診断も、あわせてご活用ください。