共有フォルダを開いて、対象のフォルダだけで検索をかけたら、Excelファイルが100件を超えていた。ファイル名を眺めても、どれが今も使われているファイルで、どれが数年前に役目を終えたファイルなのか、パッと見ただけでは判断がつかない。こうした状態は、社員数が30人を超え100人に近づいていく過程で、多くの会社が一度は通る道です。

ファイルが数十個程度であれば、正本を1つに決めて命名ルールを整えるといった整理術で対処できます。しかし件数が100個を超えてくると、話は変わります。1つずつ中身を確認して要不要を判断するだけでも膨大な時間がかかり、しかもその作業を兼任情シスが1人で、本業の合間に進めなければなりません。このガイドは、「整理術」の一歩先、つまり件数そのものが実害化した状態から、どう棚卸しと移行計画を立てて前に進めるかに焦点を当てます。個々のファイルの整理テクニックや命名ルールの作り方は扱いません。そちらは「Excelファイルが増殖する会社の共通点と整理術」に譲り、このガイドでは「件数が実害化する規模」に特有の進め方を解説します。

なぜ100個という数字が節目になるのか

ファイルの件数に絶対的な閾値があるわけではありませんが、30-100人規模の会社で共有フォルダのExcelファイルが3桁に達すると、いくつかの質的な変化が起こり始めます。

1つ目は、検索なしでは目的のファイルにたどり着けなくなることです。数十件程度であれば、フォルダ構成をある程度覚えていれば直感的に探せます。しかし100件を超えると、ファイル名の記憶だけを頼りに探すのは現実的でなくなり、検索機能への依存度が一気に高まります。検索でヒットしても、似た名前のファイルが複数出てくると、結局どれが正しいか判断がつかない、という二次的な問題も発生します。

2つ目は、属人化のリスクが高まることです。ファイルの数が多いほど、「このファイルの意味を知っているのはこの人だけ」という属人化した知識が増えていきます。100件のファイルすべての用途を1人が把握しているケースはほぼなく、担当者の異動や退職のたびに、使われなくなったのか、まだ必要なのか誰にも分からないファイルが積み上がっていきます。

3つ目は、手作業での整理が非現実的になることです。数十件であれば、1件ずつ開いて中身を確認する力技も可能ですが、100件を超えると、この作業だけで兼任情シスの本業以外の時間をすべて使い切ってしまいます。件数が実害化した段階では、力技ではなく、優先順位をつけた段階的な棚卸しの計画が必要になります。

4つ目は、心理的なハードルが一気に上がることです。数十件程度であれば「週末に片付けよう」という気軽さで着手できますが、100件を超えたフォルダを前にすると、多くの担当者は「どこから手をつければよいか分からない」という感覚に陥り、結局手をつけずに先延ばしにしてしまいます。この先延ばしがさらにファイルを増やし、着手のハードルをさらに引き上げるという悪循環が生まれます。このガイドが目指すのは、この心理的なハードルを下げるための、具体的で機械的に進められる手順を示すことです。

なお、100個という数字はあくまで目安であり、業種や部署の数によって実害化するタイミングは変わります。部署数が少なく、業務がシンプルな会社であれば200件を超えてもさほど混乱しない場合もありますし、逆に部署間の連携が複雑な会社では50件程度でも管理が破綻することがあります。重要なのは絶対的な件数そのものではなく、「検索してもすぐに目的のファイルにたどり着けない」「同じ内容のファイルがどれだけあるか誰も把握していない」という状態に陥っているかどうかです。この状態に心当たりがあれば、件数にかかわらずこのガイドの手順を試す価値があります。

全体を俯瞰する: いきなり中身を見ない

100件を超えるファイルを前にしたとき、最初にやるべきことは、1件ずつ中身を確認することではありません。まずはメタ情報だけを使って全体を俯瞰することから始めてください。

具体的には、対象フォルダ内のファイル一覧を、次の情報つきでリスト化します。

  • ファイル名
  • 保存場所(フォルダのパス)
  • 最終更新日時
  • ファイルサイズ

このリスト化は、エクスプローラーの詳細表示から手作業でコピーすることもできますが、件数が多い場合はコマンドやスクリプトを使ってファイル一覧をCSVやExcelに出力する方法も検討してください。社内に詳しい人がいなければ、この部分だけ外部に依頼するという選択肢もあります。

リストができたら、最終更新日時で並べ替えます。ここで多くの場合、明確な傾向が見えてきます。

最終更新日時の目安想定される状態
直近3ヶ月以内現役で使われている可能性が高い
3ヶ月〜1年季節性の業務、または使われなくなりつつある可能性
1年以上更新なし役目を終えている可能性が高い(ただし要確認)

経験則として、共有フォルダに長年蓄積されたExcelファイルのうち、直近で実際に更新されているのは全体の2〜3割程度に留まり、残りの大半は1年以上更新されていない「古いファイル」であることが少なくありません。この俯瞰だけで、100件のうち本当に手をつけるべきファイルが数十件程度に絞り込めることも珍しくありません。

俯瞰の段階でもう1つ確認しておきたいのが、ファイルサイズの異常値です。極端にサイズが小さいファイル(数KB程度)は、シートが空のまま作成されただけの可能性があり、逆に極端にサイズが大きいファイル(数十MB以上)は、画像やマクロが大量に埋め込まれていたり、削除しきれない履歴データが蓄積していたりする可能性があります。いずれも「要注意」の目印として、後の詳細確認の際に優先的にチェックする対象に加えておくとよいでしょう。

また、ファイル名に含まれる部署名やプロジェクト名をキーワードにして分類しておくと、次のステップで行う業務単位のグルーピングがスムーズになります。この段階ではまだ中身を精査する必要はなく、あくまでファイル名と更新日時という「表面的な情報」だけで、大まかな見取り図を作ることを目指してください。

ステップ1: 「触らなくてよいファイル」を先に切り分ける

全体を俯瞰したら、最初のステップは「今すぐ手をつける必要があるファイル」を選び出すことではなく、逆に「当面は触らなくてよいファイル」を先に切り分けることです。これは心理的にもハードルが低く、着手しやすい作業です。

切り分けの目安は次の通りです。

  • 最終更新日時が1年以上前で、かつファイル名から用途が推測でき、今の業務に直接関わっていないと判断できるもの
  • すでに他のシステムに移行済みで、旧データの参照用としてのみ残っているとみられるもの
  • 明らかに個人のメモや一時的な作業ファイルとみられるもの(ファイル名に「テスト」「下書き」「メモ」などが含まれる)

これらのファイルは削除するのではなく、「_archive_2026」のような名前をつけたフォルダにまとめて移動してください。いきなり削除しないのは、判断を誤った場合に取り返しがつかなくなることを避けるためです。アーカイブへの移動だけでも、体感できるほどフォルダがすっきりし、残った「本当に確認が必要なファイル」の数が大きく減ります。

この切り分け作業を進める際は、必ず事前に関係部署へ「更新が長期間ない古いファイルを、一時的に別フォルダへ移動します。もし今も使っているファイルがあれば、いつまでにお知らせください」といった周知を行ってください。周知なしで大量のファイルを移動すると、実は稀にしか使わないが年に一度だけ必要になるファイル(年次の申告書類など)を移動してしまい、後で混乱を招くことがあります。

周知の際に注意したいのは、「いつまでに」の期限を短く区切りすぎないことです。年に一度しか開かないファイルの担当者が、たまたま長期休暇中や繁忙期だったために確認が遅れる、というケースは十分に起こり得ます。最低でも2〜3週間程度の猶予を設け、期限が近づいたタイミングでリマインドを1回入れる、という進め方が現実的です。

「触らなくてよいファイル」の切り分けが完了すると、100件あったファイルのうち、実際に精査が必要なのは30〜40件程度まで絞り込まれることも珍しくありません。この時点で、フォルダ全体を眺めたときの心理的な圧迫感がかなり軽減されるはずです。次のステップに進む前に、一度この達成感を関係者と共有しておくと、プロジェクトへの協力も得やすくなります。

ステップ2: 残ったファイルを業務単位でグルーピングする

「触らなくてよいファイル」を切り分けたら、残ったファイル(現役で使われている可能性が高いもの)を、業務単位でグルーピングします。ファイル単体で見るのではなく、「顧客管理」「在庫管理」「勤怠関連」「経理関連」といった業務のまとまりごとに整理し直すイメージです。

グルーピングを行うと、次のようなことが見えてきます。

  • 同じ業務を指しているはずのファイルが、部署ごとに別々に存在している(台帳の分裂)
  • 1つの業務に対して、進捗管理・実績集計・報告用資料など、複数のファイルが連鎖的に存在している(工程の分断)
  • どの業務にも分類できない、目的不明のファイルが一定数残る(要調査対象)

このグルーピング作業を通じて、単なるファイル数の問題が、実は「部署ごとにフォーマットが違う」という別の課題につながっていることに気づくケースも多くあります。台帳の統一そのものが必要な場合は「部署ごとにバラバラなExcel台帳を統一するときの進め方」で扱う進め方が参考になります。

ステップ3: 「要調査」ファイルの扱いを決める

グルーピングをしても、どうしても用途が判断できない「要調査」のファイルが一定数残ります。100件規模のフォルダであれば、この要調査ファイルが10〜20件程度発生することも珍しくありません。

要調査ファイルへの対応方針は、次の優先順位で進めることをおすすめします。

  1. ファイルの中身を実際に開いて確認する: ファイル名だけでは判断がつかなくても、中を開けば作成者や用途のヒントが見つかることがあります。シートの中に作成者名や更新履歴のメモが残っていることもあります。
  2. 社内のベテラン社員に確認する: 特に長く在籍している社員は、過去の業務の経緯を知っていることが多く、ファイルの背景を教えてもらえる可能性があります。
  3. 一定期間、アクセス権限だけを外して様子を見る: 中身を見ても判断がつかない場合、思い切ってアクセス制限をかけてみて、数ヶ月の間に誰からも「使えなくなった」という声が上がらなければ、不要と判断してよい根拠になります。

すべての要調査ファイルの正体を完全に解明しようとする必要はありません。一定の労力をかけても判断がつかないものは、「要確認」のラベルをつけたまま保留にし、次の優先度の高い作業に進む割り切りも必要です。

要調査ファイルに時間をかけすぎることは、100件規模のプロジェクトが停滞する典型的な原因の1つです。1件あたりにかけてよい調査時間の上限をあらかじめ決めておく(たとえば15分以内で判断がつかなければ保留にする、など)と、限られた時間の中でも作業全体を前に進められます。要調査ファイルは全体の1〜2割程度に収まることが多く、この部分にこだわりすぎるよりも、判断がついた8〜9割の整理を先に完了させるほうが、プロジェクト全体の進捗としては合理的です。

「要調査」が多すぎる場合に疑うべきこと

要調査ファイルの割合が想定より大きく膨らむ場合(たとえば全体の3割を超えるような場合)は、単にファイルの整理が滞っていたというだけでなく、もっと根の深い問題が背景にある可能性があります。よくあるパターンを2つ紹介します。

1つは、過去に大きな組織変更や担当者の入れ替わりがあったケースです。部署の統廃合や、複数の担当者が短期間で入れ替わった時期があると、その間に作られたファイルは背景を知る人がすでに社内にいない、という状態になりがちです。この場合、無理に解明しようとせず、「不明」というステータスのまま一定期間保管し、誰からも問い合わせがなければ削除候補に回す、という運用に切り替えるのが現実的です。

もう1つは、そもそも業務プロセス自体が場当たり的に運用されてきたケースです。都度、必要に迫られてExcelファイルが作られては使われなくなる、という運用が常態化している場合、ファイルの整理だけを行っても、また同じことが繰り返されます。この場合は、整理作業と並行して、そもそも新しい業務が発生したときに「安易にExcelを新規作成しない」というルールづくりも検討する価値があります。

移行計画を立てる: 「全部を一気に」ではなく段階的に

棚卸しが一段落したら、次はいよいよ移行(整理された状態を維持し、必要であればシステム化する)の計画を立てるフェーズです。ここでも「全部を一気に」という発想は禁物です。100件規模のファイルを扱った経験から言えば、段階的な移行計画のほうが、兼任情シスという制約の中では確実に完了させられます。

移行計画は、次の3つのフェーズに分けて考えるとよいでしょう。

フェーズ1: 保存場所とアクセス権限の整理(最優先)

まず取り組むべきは、ファイルの中身に手をつけることではなく、保存場所とアクセス権限の整理です。共有フォルダの構成が入り組んでいる場合、この段階でフォルダ構造をシンプルに整理し直しておくと、後続の作業がやりやすくなります。誰でも自由に書き込める状態から、業務単位でのアクセス権限管理に移行できると、今後の「また増殖する」リスクも下げられます。

フェーズ2: 業務ごとの正本化とクレンジング

ステップ2でグルーピングした業務ごとに、正本となるファイルを決め、表記ゆれや重複を解消するクレンジング作業を進めます。この工程は業務単位で1つずつ着実に進めるべきで、複数の業務を同時並行しようとすると、どれも中途半端になりがちです。優先順位のつけ方に迷う場合は「兼任情シスが1人で進める脱Excelプロジェクトの優先順位のつけ方」で扱っている3つの軸(実害の大きさ・影響範囲・着手のしやすさ)を使って、どの業務から着手するかを決めてください。

フェーズ3: システム化が必要な業務の見極め

正本化とクレンジングが済んだ業務の中には、Excelのままの運用で十分なものと、そもそもExcelというツールの限界に達しているものが混在しています。件数が多く、複数人が頻繁に更新する業務、あるいは他部署との連携が多い業務は、Excel台帳のまま維持し続けるよりも、ノーコードツールやデータベースへの移行を検討したほうが、長期的な運用負荷が下がることがあります。この判断については「Excel台帳の限界サイン7つ。まず自社の危険度をチェックする」や「脱Excelの判断フロー: サインが出た後、何をシステム化して何を残すか」で扱っている判断軸を参照してください。

進捗を見える化する: シンプルな棚卸し台帳を作る

100件規模の整理・移行作業は、数週間から数ヶ月にわたる長期プロジェクトになります。作業の途中で「今どこまで進んでいるのか」が自分でも分からなくなると、モチベーションの維持が難しくなります。

棚卸しと移行の進捗は、次のような項目を持つシンプルな一覧表で管理することをおすすめします。

項目内容
ファイル名・業務名対象を識別する情報
ステータス未着手 / 調査中 / アーカイブ済 / 正本化済 / システム化検討中
担当部署業務のオーナー
次のアクション誰が・いつまでに・何をするか

一覧表の粒度は、ファイル1件ごとに1行にする必要はありません。業務単位でまとめた行にし、その業務に紐づくファイルの詳細は備考欄に記載する程度で十分です。細かすぎる粒度で管理しようとすると、一覧表自体の更新がまた新たな作業負担になり、本末転倒になってしまいます。あくまで自分と関係者が全体の進捗を把握できる最低限の粒度を意識してください。

この一覧表自体もExcelで作成して構いません。皮肉なことに、脱Excelプロジェクトの進捗管理は、Excelでシンプルに行うのが最も手軽です。重要なのは、複雑なツールを使うことではなく、自分自身と関係者が「今どこまで進んでいるか」を一目で把握できる状態を作ることです。

進捗の見える化は、自分自身のモチベーション維持だけでなく、経営層への報告にも役立ちます。100件規模の整理プロジェクトは、成果が目に見えにくい地味な作業の積み重ねです。「今月は30件をアーカイブし、5つの業務の正本化が完了した」といった具体的な数字を月次で報告できると、「何をやっているか分からないが、とにかく時間を取られている」という周囲の誤解を防げます。定量的な進捗を示せることは、兼任情シスがこのプロジェクトに時間を割く正当性を社内で維持するためにも重要です。

どのくらいの期間を見込むべきか

100件規模のファイル整理と移行計画の立案に、どの程度の期間がかかるかは会社の状況によって幅がありますが、目安として、俯瞰とアーカイブ(フェーズ1の前段階)に2〜4週間、業務ごとのグルーピングと正本化の計画立案までを含めると、全体でおおよそ2〜3ヶ月程度を見込んでおくと、無理のないペース配分になります。

この期間はあくまで「本業と兼任しながら、週に数時間程度を充てる」という前提での目安です。もし社内で臨時にまとまった時間を確保できるのであれば、もっと短縮できる可能性もありますし、逆に本業が繁忙期に入る時期は作業がほとんど進まない月があっても構いません。重要なのは、最初に「だいたいこれくらいの期間がかかる」という見通しを立てておき、経営層や関係部署にも共有しておくことです。見通しのないまま作業を始めると、「まだ終わらないのか」という周囲の苛立ちを招きやすくなります。

現場を巻き込む: 1人ですべてを判断しない

100件を超えるファイルの中には、兼任情シスが単独で用途を判断できないものが必ず含まれます。「このファイル、まだ使っていますか」という確認を各部署に投げかける作業は避けて通れません。

このとき、1件ずつ個別にメールや口頭で聞いて回ると、非効率なうえに相手の負担も大きくなります。おすすめなのは、部署ごとに「あなたの部署に関連しそうなファイルのリスト」をまとめて提示し、「使っているものに印をつけて、いつまでに返信してください」という形で、一括して確認を依頼する方法です。返信の期限を明確に区切ることで、確認作業がだらだらと長引くことを防げます。

現場への確認や、フォーマット変更への協力を仰ぐ場面では、一定の抵抗が発生することもあります。ファイルを消されることへの不安や、慣れたやり方を変えたくないという心理的な抵抗にどう向き合うかについては「現場の反発を避けながらExcel運用から脱却する社内説得の進め方」で詳しく扱っているので、あわせて参照してください。

よくある失敗: 整理と移行を同時に完璧にやろうとする

100件規模のファイル整理プロジェクトが途中で頓挫する典型的な原因は、「整理」と「移行(システム化)」を同時に、しかも完璧にやろうとしてしまうことです。棚卸しの途中で「このファイルはついでにkintoneに移行してしまおう」と手を広げ始めると、単純な棚卸し作業のはずが、個別のシステム導入プロジェクトに変貌し、いつまで経っても終わりません。

このガイドで扱っている「棚卸しと移行計画の立案」は、あくまで整理の土台を作るフェーズです。実際にシステム化に着手する判断や具体的な移行作業は、土台が整ってから、優先順位に沿って1つずつ着手する別のプロジェクトとして切り出してください。土台作りの段階でシステム化まで一気に進めようとしないことが、100件規模のプロジェクトを完走させる最大のコツです。

もう1つよくある失敗は、フェーズ1(保存場所とアクセス権限の整理)を軽視して、いきなりフェーズ2(正本化とクレンジング)から着手してしまうことです。保存場所とアクセス権限が整理されていない状態でどれだけ正本を決めても、誰でも自由に新しいコピーを作れる環境が残っている限り、時間の経過とともにまた同じ問題が再発します。地味に見えるフェーズ1こそ、実は最も再発防止効果の高い工程だという点を意識して、順序を飛ばさずに進めてください。

まとめ: 件数の多さは「仕組みの不在」が積み重なった結果

共有フォルダのExcelファイルが100個を超えている状態は、日々の整理を怠った結果というよりも、保存場所・命名ルール・アクセス権限・正本管理という仕組みが最初から存在しなかったことが、時間をかけて積み重なった結果です。この状態を1人で立て直すには、いきなり中身を精査するのではなく、まず俯瞰し、触らなくてよいものを切り分け、業務単位でグルーピングし、段階的な移行計画に落とし込むという順序が欠かせません。

100件規模の整理は、決して数日で終わる作業ではありません。数週間から数ヶ月かけて、少しずつ確実に前進させていくものだと最初から見積もっておくことで、途中で挫折せず、着実にゴールへたどり着けます。整理が一段落したら、二度と同じ状態に戻らないための保存場所とアクセス権限のルールも忘れずに定着させてください。

最後に強調しておきたいのは、この規模のプロジェクトを兼任情シスが1人で完璧にやり遂げる必要はないということです。要調査ファイルの判断に現場の協力を仰ぎ、優先順位の決定に経営層を巻き込み、進捗を定期的に共有しながら進めることで、1人で抱え込むよりもずっと現実的なペースでゴールに近づけます。100件のファイルを整理し終えた頃には、単に共有フォルダがすっきりするだけでなく、「どの業務にどんな台帳があり、誰が責任を持っているか」という会社全体の見取り図が、あなたの手元に出来上がっているはずです。この見取り図こそが、その後の脱Excelプロジェクト全体を進めるうえでの、最も価値のある土台になります。

このガイドで紹介した俯瞰・切り分け・グルーピング・要調査対応という一連の手順は、100件を大きく超えるフォルダでも、逆に数十件程度の小規模なフォルダでも、基本的な考え方は変わりません。件数の多寡にかかわらず「いきなり中身を精査しない」「触らなくてよいものを先に切り分ける」という順序を守ることが、限られた時間の中で確実に前進するための最も重要な原則です。今日この瞬間から、まずは対象フォルダを開いて、ファイルの一覧を眺めるところから始めてみてください。

なお、今回整理した共有フォルダも、何もしなければ数年後には再びファイルが増殖し、同じ状況に逆戻りする可能性があります。整理をやり切った達成感で終わらせず、保存場所・命名ルール・アクセス権限という仕組みを組織の習慣として根づかせることまでを、このプロジェクトのゴールに含めておいてください。